今回はかなり珍しい修理事例のご紹介です。1984年製の富士通FM-77が、2018年当時も工場の産業機器(NC工作機械)に組み込まれて現役稼働しており、その修理対応をした実例です。
目次
- FM-77とは:タモリCMで有名な伝説のPC
- 現場の状況:NC工作機械に組み込まれた現役マシン
- 診断:拡張RAMカードの故障
- 修理:全チップ打ち換えという選択
- 結果:NC機器が復活
- なぜ古いPCが今も工場で使われるのか
- レガシーシステムのサポートについて
FM-77とは:タモリCMで有名な伝説のPC
FM-77は1984年に富士通が発売したパーソナルコンピュータで、FM-7シリーズの上位機種です。当時のテレビCMにはタモリさんが起用され、キャッチコピー「青少年は興奮する」で話題を呼びました。
- CPU:MC6809E(2MHz)
- RAM:64KB(標準)、拡張RAMカードで最大192KB追加可能
- ストレージ:5インチフロッピーディスク(HDDなし)
- OS:F-BASIC、またはCP/M互換
- 発売当時の価格:約19万8千円
当時としては高性能なグラフィック機能を持ち、ゲームやビジネスアプリケーションで人気を博しました。現在では中古市場でもなかなかお目にかかれない希少なコンピュータです。

富士通 FM-77(※仮URL・要差し替え)
現場の状況:NC工作機械に組み込まれた現役マシン
今回のお客様は工場を経営されており、NC(数値制御)工作機械の制御コンピュータとしてFM-77が組み込まれていました。NCとはコンピュータプログラムの指示に従って材料の切削・加工を自動制御する機械のことです。
FM-77はパッケージ(筐体)に内蔵された状態で、フロッピーディスクに保存された加工プログラムを読み込んで機械を動作させていました。


パッケージに内蔵されたFM-77
事前にNCメーカーに修理を依頼したところ、「PC側の故障であり、30年以上前の機種のため修理は不可。NC装置ごと買い替えを推奨」との回答でした。NC装置一式の買い替えとなると、数百万円以上の費用が発生します。
そこでPCの修理対応をご提案しました。
診断:拡張RAMカードの故障
FM-77を点検した結果、原因は拡張RAMカードの故障と判明しました。
このPCには、NCプログラム起動用に拡張RAMカードが装着されており、192KBのメモリが増設されていました。(標準の64KBと合わせて256KB)
NCプログラムの起動に必要なメモリ容量を確保するためのカードですが、30年以上の経年劣化により内部のRAMチップが故障していました。

なぜ拡張RAMカードの入手が困難なのか
FM-77専用の拡張RAMカードは純正オプション品であり、現在は製造されておらず中古市場にもほぼ流通していません。仮に見つかったとしても、同様の経年劣化により動作保証のある個体を入手することはほぼ不可能です。
修理:全チップ打ち換えという選択
拡張RAMカードの修理方針を検討しました。
- 不良チップのみ交換:どのチップが不良か特定して交換する方法
- 全チップ打ち換え:実装されているRAMチップをすべて新品に交換する方法
30年以上経過しているため、仮に一部のチップのみ交換しても残りのチップも近い将来故障する可能性が高いと判断。全チップ一括打ち換えを選択しました。これにより修理後の安定稼働期間を最大化できます。
交換作業はハンダ除去→新品チップのハンダ付けという手作業になります。古い基板は熱に弱いため、温度管理に細心の注意を払いながら作業を行いました。
結果:NC機器が復活
修理した拡張RAMカードをFM-77に装着し、NCプログラムのフロッピーディスクを読み込ませたところ、正常起動を確認しました。
NC工作機械も問題なく動作し、お客様の工場業務が再開できました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 修理内容 | 拡張RAMカード 全RAMチップ打ち換え |
| NC装置買い替えとの比較 | 買い替えコストの数十分の一以下で解決 |
| 作業期間 | 点検・修理・動作確認を含め数日 |
なぜ古いPCが今も工場で使われるのか
「なぜ40年前のPCが今も現役なのか」と不思議に思われるかもしれません。理由はシンプルです。
- 専用ソフトウェアの問題:NC工作機械を動かすプログラムは、その機械専用に書かれたものが多く、現代のOSやPCでは動作しない
- 買い替えコストが膨大:NC装置一式を最新機種に入れ替えると、数百万〜数千万円の投資が必要
- 習熟コスト:操作方法や保守知識を一から習得する必要がある
- 継続稼働の実績:動いているものを止めるリスクより、修理して継続する方が現実的
同様の理由から、PC-9801シリーズ(日本電気)なども工場・医療機器・計測機器の制御用として今も現役で使われているケースが多くあります。
レガシーシステムの現状
FM-77のような40年以上前のPCが今も産業現場で現役稼働しているのは珍しいことではありません。メーカーサポートが終了した機器でも、ハードウェアレベルでの修理・チップ交換で延命できるケースがあります。「修理不可」と言われたからといって、すぐに諦める必要はないということが、この事例から伝わると幸いです。
余談ですが、筆者の初めて所有したPCはNECのPC-9801DXでした。1980年代〜90年代のPCが今も現役で動いている場面に出会うと、幼少期を思い出して心が躍ります。
